土と語る、森の中の美術館 兵庫陶芸美術館 The Museum of Ceramic Art, Hyogo

お知らせ

2025年6月11日

2025年度著名作家招聘事業・特別展示「秋永邦洋 仮想の生命」について

兵庫陶芸美術館では、国内外で活躍する著名な作家を招聘し、若き作り手たちに刺激を与えるとともに、幅広い人々により深く陶芸に親しんでいただくため、2006年より「著名作家招聘事業」を実施しています。第20回となる今回は、動物の骨格と装飾をテーマに独創的な立体作品を制作し、国内外で注目を集めている気鋭の作家・秋永邦洋氏(1978- )をお迎えします。

兵庫県尼崎市で制作している秋永氏は、プロダクトデザインに憧れ、大阪芸術大学で陶芸を学びますが、そこで、自由なフォルムやテーマを追求する「現代陶芸」と出会い、自分なりのスタイルを模索していきます。精密旋盤による金属加工の工場を営む父の影響で、幼少期から金属という素材や高度に完成された機械部品の精巧な美しさに魅せられていた秋永氏は、土を自由にかたちづくることができる「手びねり」、金属のような鈍い光沢を放つ「黒マット釉」を自身の造形のベースに据え、曲線を活かしたシャープな抽象形態を追求しました。転機となるのは2007年。シンプルなフォルムから一転、「装飾」というテーマが現れ、植物模様をデフォルメしたような複雑な形態へと向かいます。そして、洋の東西問わず、様々な図案を参考にしながら制作するうちに、今度は「なぜ、人は装飾するのか。装飾とは本質を偽装するものではないか」との思いに至ります。それは、真偽の分からない情報が氾濫し、本質が見えにくくなっている現代社会のイメージとも重なり合い、2012年、装飾(偽装)された動物(生)の骨(死)という衝撃的な作品《擬態化》シリーズが生まれました。尽きることのない人間の欲望と、欲望を満たした後に漂う死と儚さ。それは、何万年でも残っていく恒久性を持つ一方、衝撃に弱く壊れやすいという二面性のある陶の本質が、自身の求めるテーマと深く共振していくものでした。

このたび、秋永氏を代表する《擬態化》シリーズの集大成ともいうべき大作《擬態化(龍)》・《擬態化(虎)》を一対で展示するとともに、その後に新しく展開した《朧気》シリーズも合わせて展示します。流れるような曲線の重なり合い、金属質の黒の釉薬の妙、そして、どこか隙のない、人工的な美しさを放つ秋永氏の創造の世界。新しいシリーズでは、仮想と現実の間で揺れ動く「存在とは何か」を問いかけます。

展示名:秋永邦洋 仮想の生命 Kunihiro Akinaga, Hypothetical Life

会 期:2025年6月4日(水)~11月24日(月・振休)

場 所:兵庫陶芸美術館 展示棟1F エントランス

料 金:無料

 

〔写真上 《擬態化(龍)》 2019 写真下《擬態化(虎)》 2020      撮影:南野馨〕

 

*8月中旬に作家をお迎えして、ワークショップを開催する予定です。

 内容が決定次第、当ホームページで告知します。

 

秋永邦洋 Kunihiro Akinaga 略歴

 

1978 大阪府大阪市に生まれる

2001 大阪芸術大学芸術学部工芸学科陶芸コース卒業

2019 滋賀県立陶芸の森アーティスト・イン・レジデンス ゲスト・アーティスト(〜20)

現在、兵庫県尼崎市にて制作

 

主な展覧会

2025 Ceramic Brussels/ブリュッセル、ベルギー

2021 No Man’s Land-陶芸の未来、未だ見ぬ地平の先/兵庫陶芸美術館

2020 大集合!やきものどうぶつ/山口県立萩美術館・浦上記念館

2019 陶の花 FLOWERS/滋賀県立陶芸の森 陶芸館

2018 第13回パラミタ陶芸大賞展/パラミタミュージアム、三重

2017 原田の森ギャラリーリニューアルオープン展-ひょうごから世界へ-/兵庫県立美術館王子分館 原田の森ギャラリー

2016 2016 TAIWAN Ceramics Biennale/新北市立鶯歌陶磁博物館、台湾

伝統と革新-日本陶芸の今/滋賀県立陶芸の森 陶芸館・フレデリック・マイヤーガーデンズ&スカルプチャーパーク、アメリカ

2013 第58回ファエンツァ国際陶芸展/イタリア (15)

2011 第30回長三賞現代陶芸展/愛知県陶磁資料館

第14回岡本太郎現代芸術賞展/川崎市岡本太郎美術館、神奈川

 

受賞 Awards

2015 マイヤー×信楽大賞 金賞

2009 第29回長三賞現代陶芸展 長三賞

2001 第39回朝日陶芸展 奨励賞

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