16~17世紀に東洋から西洋にもたらされた喫茶の文化は、その後のテーブルウェアの成立やインテリア、装飾美術の発展に貢献しました。テーブルウェアと食文化の様式は19世紀に確立しますが、そのなかで異色な存在として現れたのが、濃いコーヒーを飲むための小さなコーヒーカップ、デミタスでした。
19世紀、中産階級が勃興したヨーロッパにはコーヒー文化が浸透し、デミタスの多彩なデザインが誕生しました。一方、19世紀半ば以降、万国博覧会を契機に、欧米でジャポニスムが流行し、日本的なモチーフや構図を発展させたデザインが生まれました。また日本の窯元で輸出用に生産されたカップ&ソーサーも人気を呼びました。世紀末にはジャポニスムに影響を受けたアール・ヌーヴォー様式がデザイン界を席巻します。そして、デミタスカップにも精緻を極めた技巧を詰め込み、冒険的ともいえるデザインが生み出されています。
本展では、2000点を超える村上和美氏のコレクションの中から、19~20世紀に欧州の名窯が生み出したジャポニスム、アール・ヌーヴォー、アール・デコのデザインなど当時の流行を反映した作品を中心に、珠玉の約380点を紹介します。
1 珠玉の約380点を一挙公開
手のひらに収まるほど小さなカップには、技術の粋が集められています。西洋の人物や天使、動植物、風景などが細部まで表わされた絵付け。盛り上げた金彩やエナメルを、一面にちりばめた華麗な装飾。透かし彫りが器面を飾る名品。レリーフ装飾の美しいカップ。そして、ガラスや銀のカップ。さらに、とても小さなミニチュアサイズのカップ&ソーサーなど、多彩な優品の数々をお楽しみ下さい。
2 世界各国の名品をお披露目
18世紀から20世紀の12か国60社を超えるデミタスカップを一堂に紹介します。ヨーロッパ各地にコーヒーを飲む文化が広まると、マイセン(ドイツ)、ロイヤルウースター、ウェッジウッド、ミントン(いずれもイギリス)、セーヴル(フランス)、ヘレンド(ハンガリー)などのヨーロッパの名窯、そしてアメリカのレノックス、さらに日本では京薩摩の錦光山やオールドノリタケ(名古屋)など、世界中でデミタスカップが作られました。
3 デザインはヨーロッパ好み
ヨーロッパ美術のエッセンスを取り入れたデザインは、欧州を席巻しました。中国趣味の「シノワズリ」(17世紀~19世紀初期)。日本趣味の「ジャポニスム」(19世紀後半)。自然をモチーフにした優美な「アール・ヌーヴォー」(19世紀末~20世紀初期)。幾何学的な構図の「アール・デコ」(20世紀前半)など。キャンパスに見立てた器面に優美に描かれています。
展覧会名 | デミタスカップの愉しみ The Joy of the Demitasse Cup |
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会期 | 2023年6月10日(土)~8月27日(日) |
休館日 | 月曜日 ただし、7月17日(月・祝)は開館し、7月18日(火)は休館 |
開館時間 | 10:00~18:00(7・8月の土日は9:30~) ※入館は閉館の30分前まで |
出品点数 | 約380点 |
会場 | 兵庫陶芸美術館 展示棟 展示室1・2・4・5 |
個人 Individual |
団体 Group |
夜間(17:00~) Evening |
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一般 Adult |
¥1,200 | ¥900 | ¥600 |
大学生 University/College |
¥900 | ¥700 | ¥450 |
・高校生以下は無料です。
・20名以上の場合は団体割引料金になります。
・70歳以上の方は半額になります。
・障害のある方は75%割引、その介助者1名は無料になります。
・17:00以降に観覧される場合は夜間割引料金になります。
・Free admission for High / Junior high / Elementary school students and Preschool-age children.
・Group : 20 or more people.
・Half price for visitors aged 70 or older. (Show identification proving your age)
・Discount admission for one with disabilities, and free admission for one caregiver. (Show identification notebook for the disabled)
・Evening discount admission: from 17:00.
1.ミントン《ターコイズ地七宝繋ぎに花文カップ&ソーサー》1871年
2.ロイヤルドルトン《花束文金彩テニスセットカップ&ソーサー》1891-1902年
3.アダレイ《金彩薔薇図カップ&ソーサー》1886-1905年
4.錦光山《京薩摩金彩龍文カップ&ソーサー》1800年代後期
5.ロイヤルウースター《ピンク地両ハンドルカップ&ソーサー》1893年
6.KPMベルリン《金彩花卉文ハイハンドルカップ&ソーサー》1902年
※作品の所蔵はいずれも村上和美氏
◆当館学芸員によるギャラリートーク
[日時]6月17日(土)、7月1日(土)、7月29日(土)、8月12日(土)、8月26日(土)
いずれも11時より1時間程度
※観覧券が必要です
2023年3月11日(土)~2024年2月25日(日)
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